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<コラム> 白のランジェリーはいかが?

COLOR No.173掲載

衣類(アウター)の色が他者の認知に対する影響はいろいろ研究されています。その中でも特に有名なものはElliotら(2013)などの一連の研究で、赤が女性の魅力を増大させることを報告しています。さらに、男性の魅力も赤により高められるという彼らの報告は、以前COLOR No. 154(2010)「赤いのはお好き?」でもご紹介いたしました。これらの効果は、霊長類にも現れる性的成熟のサインとしての赤と関連付けられて議論されることがあります。そのため、女性も男性も潜在的なパートナーに自分の魅力を最大限アピールして適応度を高める、言い換えれば繁殖機会を増やそうとする場合、赤い衣類を身につける傾向があるということです。確かに、霊長類に見られる身体や顔面が赤く色付くことは潜在的パートナーへの強力なアピールになることは間違いないのかもしれません。しかし、私達人間が自分を魅力的に見せて、パートナーを惹き付けようとするときに身につけるのは赤だけでしょうか。ある研究では、自分を魅力的に見せようとする場合、黒を多く着用すると報告しています。Pazda、et al.(2014)は、黒い服がファッショナブルさを介して魅力に影響を与えるといいます。また、男性が女性の魅力を評価する基準の一つに「女性らしさ」があり、白い色を「女性らしさ」や「純粋さ」と関連付ける傾向があるという先行研究などから、白には女性の魅力を高める効果があるとも考えられます。
いずれにせよ、衣類の色の研究はもっぱらアウターに焦点が当てられてきましたが、Luzietti & Wade (2020)は女性の魅力などがランジェリーの色によって違いが生じるかどうかを調べる研究を行いました。彼らはランジェリーの色として上記の3色(赤・黒・白)で調査を行っています。
調査参加者:154名(うち女性82名)年齢18〜65歳(平均21.9、SD=5.62)。
刺激画像:白のランジェリーを身につけて直立したブルネットの若い女性をストック画像から1枚選び、Photoshopでランジェリーの色を黒と赤にした画像を追加作成しました。
調査手続:調査参加者はオンラインで調査に参加し、3色のランジェリーのうち、いずれか1色の刺激画像を提示され、身体的魅力、性的魅力、信頼性、面倒見の良さ、男性性、女性性、健康、熱意、社会的能力、愛情、友好的、知性、優位性、年齢、良い伴侶、短期的配偶の可能性、長期的配偶の可能性、子育て能力、成功した、ステータスといった観点から、1(全く)〜7(とても)の7段階で評価するように求められました。同時に、回答者自身の性別、年齢、人種などといった人口統計学的質問の回答も求められました。
調査結果:友好的、成功した、良い伴侶、健康で有意差が認められ、いずれも白のランジェリーを身に着けている女性の評価が優れていました。
なお、回答者の性別による傾向もあり、色に関係なく女性は女性性を高く評価し、男性は短期的配偶の可能性、長期的配偶の可能性で高い評価をしていました。
Luzietti & Wadeは白いランジェリーを着ている女性が最も魅力的で進化的に適応していると評価されると考えたようですが、性的魅力といった知覚される魅力には大きな差は見られませんでした。しかし、友好的、成功した、良い伴侶、健康などで高い評価を得ることができました。
この調査から、アウターの色が女性の評価に影響を与えるように、アンダーウェアの色も女性の認識に影響を与えることが示唆されました。
彼らは、論文中でランジェリーの色の重要性を示した最初の研究であると自負していました。確かに、ランジェリー姿の女性の画像を使っての調査を実施するのは気恥ずかしい感じもするので、なかなか手がつけられない領域なのかもしれません。
彼ら自身も述べているように、この調査の刺激画像は白人女性だけなので、日本人を含め白人以外の刺激を用いた場合に同じパターンの結果になるかは明らかではありません。また、調査が主に若年層だったので、高齢者層の認識についても分からないとしていますが、進化的適応度という観点からすれば、これから子孫を残す可能性は低いでしょうから、あまり重要ではないような気もします。ただ、刺激画像が高齢者だったら、と考えると恐ろしさを禁じえません。

Reference
1. Elliot, A. J., Greitemeyer, T., & Pazda, A. D. (2013).,Women’s use of red clothing as a sexual signal in intersexual interaction., Journal of Experimental Social Psychology, 49(3), 599-602.
2. Luzietti, S., & Wade, T. J. (2020)., A Choice of Color: Does Lingerie Color Affect Perceived Attractiveness and Evolutionary Fitness?, EvoS Journal: The Journal of the Evolutionary Studies Consortium, 11, Sp. Iss (1), 57-67.
3. Pazda, A. D., Elliot, A. J., & Greitemeyer, T. (2014)., Perceived sexual receptivity and fashionableness: Separate paths linking red and black to perceived attractiveness., Color Research & Application, 39(2), 208-212.

〈江森 敏夫〉

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