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<巻頭言> 色彩と知的財産

COLOR No.165掲載

株式会社サンビジネス 取締役・弁理士 川上 和秀 

 知的財産を扱う仕事をしているのだが、最近は商標に関する業務の割合が多い。商標とは、例えば、「TOYOTA」という文字や、「Appleマーク」など、企業等が取り扱う商品・サービスを、他人のものと識別するために用いる標識のことである。特許庁に対して商標を出願し(この際、商品・サービスも指定する)、審査を経て登録が認められると、その商標を指定した商品・サービスについて、独占的に使用する権利が与えられる。
 2015年4月1日から、これまでの文字や図形の商標に加え、音商標や動き商標、そして色彩のみからなる商標についても、出願が認められるようになった。色彩のみからなる商標については、2017年2月20日時点で492件の出願がなされていたが、この時点では登録されたものはなかった。
 色彩のみからなる商標の出願の受付開始から2年近くが経過した2017年2月28日に、ようやく特許庁が2件の登録を認めた。トンボ鉛筆による「消しゴム」に関する「青/白/黒」の配色と、セブン−イレブン・ジャパンによる「小売業」に関する「オレンジ/緑/赤」の配色の2件である。それぞれ、消しゴムのカバーと、店舗の看板に用いている配色である。
 色彩のみからなる商標については、商品・サービスの需要者や取引者の間で、それが周知・著名となっていることが、登録の基準となっている。審査の経過を見ると、両社とも周知性・著名性の立証に、非常に力を入れていたことが伺える。トンボ鉛筆は、1980年から現在まで一貫して同じ配色を使用してきたことや、消しゴムの市場占有率が常に首位であったことなどを、証拠を用いて主張している。セブン−イレブン・ジャパンは、「オレンジ/緑/赤」の認識状況について、外部の調査会社に委託してアンケートを行い、その結果を証拠として提出している。アンケートは「オレンジ/緑/赤」の画像と、それが「小売店のコーポレートカラーであること」を提示し、思い浮かべたものを自由回答させる形式であった。
 さて、(株)サンビジネスでは、平成27年度に特許庁からの委託で「新しいタイプの商標審査に関連した色彩に関する調査研究」を行った。事業アドバイザーとして日本色彩研究所にもご協力をいただき、色彩の類否についての一般の方へのアンケートや、業界における色彩の使用状況に関する企業ヒアリングを実施した。色彩の専門家の方々と調査研究を進める中で感じたことは、商標の世界では色彩を厳密に扱っていない場合も多いということである。例えば、色彩のみからなる商標を願書で説明する場合には、基本色名、系統色名、慣用色名、RGB、CMYKといった、様々な指定方法が認められている。また、商標法上、色彩の違いを除外すると同一である商標を、同一商標とみなす規定があり、文字や図形の商標については、カラーで出願せずにあえてモノクロで出願をする場合もある。
 知的財産に携わる者は、色彩を商品・サービスの魅力の向上のために用いるものと捉えることが多いように思うが、色彩による識別・差別化がどうなされるかについても、色彩研究からもっと学べることがあり、それは実務とも直結する知識となるのではと思う。また、色彩研究の立場からは、色や配色を一企業に独占させるような商標制度に違和感があるかもしれないが、色彩の類似範囲の概念や、企業が用いる色彩の周知・著名性の判断方法などについては、ぜひ知見をいただきたいところである。色彩のみからなる商標をきっかけに、知的財産の世界と、色彩の世界が、さらに近づくことを期待している。

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