一般財団法人日本色彩研究所
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<研究1部報> 色彩のみからなる商標の登録制度
−特許庁調査研究の事業アドバイザーを担当して−

COLOR No.164掲載

昨年2015年の4月1日、「新しいタイプの商標」の保護制度が始まりました。商標とは、企業や商品、サービスにつけられた広義のマークのこと。識別のための目印です。それ以前は、文字(例:adidas)、図形(くまモンのイラスト図)、記号(三菱のマーク)、立体(カーネル・サンダース人形)、文字と図形の組合せ、そしてそれらと色彩が結合した商標(JTBの赤い文字)に、商標は限定されていました。
そこに新たに追加されたのが、動き(文字や図形の画面での変化)、ホログラム(見る角度での色変化)、色彩のみ、音、そして位置(文字や図形等の商標位置)の5タイプの商標です。このうち「色彩のみ」の商標は、商品パッケージや包装紙、看板の色や配色のように、図形と色との結合ではなく、色々な形状を取りうる輪郭をもたないものとされています。
色彩商標が登録されると、その色をその分野の他の商標には使用できなくなり、例えば「サロンパスを買ってきてもらうようにおばあちゃんに頼んだら、配色がそっくりの安い湿布薬を間違えて買ってしまった」というような誤り購入を防ぐことができます。消費者にとっても、商品を開発した企業にとっても色彩商標の保護にはメリットがあるのです。
■出願多くとも、まだ登録はなし
色彩商標の出願数はとても多く、現在468件に達しています1)。初日の4/1には180件もの出願が殺到し2)、夏以降は毎月およそ10件程度に落ち着いています。ところが、出願から1年経っても登録が認められたものはひとつもありません。音の商標では既に11/6に最初の登録があり、現在28の登録がありますが、色彩商標は審査が難しいのです。審査すべき内容は、「出願された色彩商標が、その商品・サービス分野において、他の色彩商標に対して十分な識別力を持ち、さらにその色づかいがそのブランドを十分に同定させる力をもっているかを判断すること」といえるかと思います。この判定は中々に厄介です。なお、単色よりも配色の商標の方がブランドを想起しやすい傾向があるため、登録は配色商標から始まるように予想しています。
■識別力が無いとして拒絶し、意見書で審査
ところで、特許庁は「色彩のみからなる商標は原則として商品やサービスを識別する力をもたない」と述べています。色は本来的に商品等の美観を高めること等を目的とするからであるというのです。したがって、色彩商標として出願してもその色には識別性がないとして拒絶理由通知が送られてきます。そこで、出願者はその色彩の商標としての使用データと一緒に、使用により識別力が認められるとの意見書を提出します。それを受けて審査し、条件を満たしていればようやく登録されます。そうしたやり取りがあり、判定基準などがまだ明確ではないため、登録に至っていないのだろうと推察します。
■特許庁による基礎研究事業
昨年、特許庁では、今後の審査基準や運用を検討するための基礎研究事業として、「新しいタイプの商標審査に関連した色彩に関する調査研究」を行いました。実際の調査研究は(株)サンビジネスが請け負い、弊所はその事業アドバイザーを担当しました。また、色彩規格関連の専門者として小松原理事長が有識者ヒアリングを受けました。
本調査では、主に、(1)一般者を対象としての色彩の類否についての認識(色AとBの類似性判断)に関する調査と、(2)車のタイヤの黒などのように商品等から自然発生する色彩や商品に不可欠な色彩についての、企業からの聴き取り調査から構成されています。そして、提出された研究報告書が、先頃、特許庁HPに公開されました。「新しいタイプの商標審査に関連した色彩に関する調査研究」を検索語とすればヒットしますので、ご興味ある方はお読みください。個人的には、色の類否研究の結果もですが、機能等を満足させるために必然的にその色となる様々な事例は大変興味深く感じました。
■今後の課題など
今後に検討すべき課題としては、(1)その分野で登録、流通されている色彩商標の色彩分布を示す図表の作成、(2)色同士の類似性尺度値を算出する計算モデルの構築、(3)色彩使用によりどの程度のブランド同定性を有しているかを定量的に把握する方法、(4)出願時の色の記述法などがあると感じました。
なお、4月下旬に特許庁の商標審査官と審判官を対象に、色彩の類否に関する研修講座を担当することになりました。これからも、色彩商標の審査、登録について注目していきたいと思います。

1)色彩のみからなる商標の出願状況をみるには、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)のトップページから、「商標」→「2商標出願・登録情報」→「商標のタイプ:色彩のみからなる商標」を選び、検索ボタンを押せばOK。
2)一番乗りは「久光製薬の青緑白(サロンパス色)」

〈名取 和幸〉

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